2011年6月1日星期三

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎(Mycoplasma Pneumonia
細菌とウイルスの中間の大きさで核をもつ微生物としては最も小さいMycoplasma pneumoniaeによる感染症で、上気道炎・急性気管支炎のうちは軽症なので一般のかぜ症候群とほぼ同様の対応・処置で構いません。問題となるのはマイコプラズマ肺炎です。小児(4歳以下は軽症のことが多い)や学童・若年成人に多く発症し、健常な小児(5 - 12歳)や若年成人に下記に示すような症状が続くときはマイコプラズマ肺炎を強く疑います。市中肺炎の原因細菌としては肺炎球菌が最も多く、次いでインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは違います)やマイコプラズマがあります。季節的には初秋から冬に多く見られる傾向がありますが、最近は季節感が無くなってきているためか春から夏にかけてもみられるようになっています。4年(35年)周期の流行(オリンピックの年)が特徴的といわれていますが(その間の2年毎の小周期もみられることがあります)、近年、4年周期の流行という特徴は崩れてきているようです。この疾患はインフルエンザおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、風疹などのように咳やくしゃみ等による飛沫感染によって家族や学校などの人の集まる場所で流行します。
(1)症状
- 3週の潜伏期をおいて症状が出現します。痰がからまったような湿性の咳とは違った乾性咳嗽(ほぼ100%)と全身症状としての発熱38度以上の発熱は50%以上にみられる)が主な症状です。粘液性の痰が見られることもありますが、一般的なかぜ症候群と違って咽頭痛や鼻汁などはあまり多くありません。特に夜間に増悪する頑固な咳が長く続くのが特徴的です。頻度は高くありませんが呼吸器症状以外にも発疹や紅斑などの皮膚病変、肝機能障害、胸痛や不整脈・心筋炎などの循環器症状、髄膜炎・脳炎やギラン・バレー症候群など中枢および末梢神経、鼓膜炎などがみられることがあり、重症肺炎例では多量の胸水とともに呼吸困難がみられることもあります。
(2)診断
検査所見では白血球は正常範囲あるいは軽度増加(15,000/mlを超えない)、CRP陽性、血沈亢進、一過性にGOTGPTの上昇、寒冷凝集反応陽性(特異的ではなく補助的診断法)などがみられます。抗体検査では、急性期に1回測定し2 - 4週後再度測定するペア血清で4倍以上の上昇、あるいは単独のCF法では80倍以上の上昇を陽性と診断します。また、DNA検出(PCR法)や喀痰・咽頭ぬぐい液からの菌の分離・培養(PPLO培地)による証明でも診断できます。
マイコプラズマ肺炎に特徴的な胸部X線像はありませんが、すりガラス状の肺胞性あるいは間質性陰影が散在して(skip lesion)みられます。CT検査では気管支壁の肥厚と散在する斑状影(skip lesion)が見られ他の肺炎との鑑別に役立ちます。
(3)治療
A.対症療法
咳が強いため鎮咳薬や去痰薬、発熱に対して解熱鎮痛薬を必要に応じて使います。発熱などで脱水が見られる場合(特に小児)は水分補給が必要で、経口的に摂取できないようなときは補液(点滴)を行います。また、急性呼吸不全を伴う重症例や髄膜炎・脳炎を併発するような場合はステロイドを用いることがあります。
B.基本的治療
マイコプラズマは細胞壁を持っていないため細胞壁合成阻害薬であるペニシリン系やセフェム系などのβラクタム系抗生物質は効果が無く、蛋白合成阻害薬であるマクロライド系やミノマイシン系、あるいは核酸合成阻害薬であるフルオロキノロン系薬が効果的です(マクロライド系抗生剤はワーファリン、テグレトール、アセナリン、トリルダンなどとの併用は要注意)。
肺炎という重症の印象のある疾患名ですが一般的に予後は良好であり、10 - 14日間の抗生剤使用で呼吸器症状は改善しますし自然治癒することもあります。治療を行っていれば胸部X線上の所見は平均4週(1 - 16週)で消失します。
(4)予防
インフルエンザ同様に飛沫感染するため家族内や学校や職場などの集団内での感染率は高くなります。家族内にマイコプラズマ肺炎の感染者がいても、感染予防のための「予防内服は」、一部に感染率低下に効果的との報告はありますが家族内に慢性呼吸不全や重症の気管支ぜん息の方がいる場合を除いて通常は行われません。

学校保健法における取り扱い
登校・登園は急性期が過ぎて本人の全身状態が改善すれば可能です。学校での流行は第3種学校伝染病として出席停止などの措置がとられる場合があります。

 

マイコプラズマ

マイコプラズマ (Mycoplasma) は、真正細菌の一属。一般の真正細菌に見られるペプチドグリカン細胞壁が無く、そのため細胞の形は不定形で可塑性がある。細胞膜は他の真正細菌のそれに比べて強度が高い。

ゲノムサイズが極めて小さく(55-140塩基対程度)、大半が合成培地で増殖できず、たいていの場合は多くの成長因子を必要とする。自然条件では特定の真核生物に寄生する。

目次

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·                                 1 分布

·                                 2 コンタミネーション

·                                 3 医療におけるマイコプラズマ

o                                        3.1 疫学

o                                        3.2 症状

o                                        3.3 診断

o                                        3.4 治療

分布

Mycoplasma属の多くは動物に寄生し、病原菌であるものが多い。 関節症をはじめ、肺炎などの原因となる。

コンタミネーション

細胞壁を持たないため細胞の形状に可塑性があり、0.22μmフィルターを通過する。 そのため、細胞培養に用いる培地は、ろ過滅菌してもしばしばマイコプラズマによるコンタミネーション(汚染)が見られることが多い。細菌や真菌のコンタミネーションでは汚染が目視することができ、培養細胞が死に至ることが多いためコンタミネーションの発見は容易であるのに対して、マイコプラズマのコンタミネーションでは顕微鏡下であっても小さすぎて目視することができず、また培養細胞と共存することが多いためコンタミネーションの発生を見逃しやすい。

マイコプラズマのコンタミネーションによる影響としては、培地の栄養の消費による培養細胞の成長阻害の他、マイコプラズマの直接の作用による代謝経路への影響や、遺伝子発現への影響が確認されている。 そのため、細胞を用いた実験結果の正しい評価のためには、マイコプラズマのコンタミネーションがないことを確認する必要がある。

検出のためのゴールドスタンダードは培養法であるが、ポリメラーゼ連鎖反応PCR法)やEIA、核染色法(ヘキスト染色法/Hoechst Stain Method)でも検出が可能である。 培養法は種の同定や検出率で優れているが、結果が得られるまでに時間がかかり、種の同定には熟練が必要である、という欠点がある。また、培養の困難な菌も存在する。 一方PCR法やEIA法はその日の内に結果を得ることも可能であるが、特定の種しか検出できない。 ヘキスト染色法も測定に要する時間は短いが、染色されたものがマイコプラズマであるのか細菌等の核やデブリであるのかを見分けるには熟練が必要である。 最近ではマイコプラズマの酵素を利用したマイコアラート法(MycoAlert® Mycoplasma Detection KitLonza社)のような30分以内での測定が可能な製品もできてきており、検出をルーチンで行うことも簡単になってきた。

医療におけるマイコプラズマ

マイコプラズマはしばしばヒトにおいて非定型肺炎を引き起こす。 主に幼児、小中学生が感染する肺炎。

疫学

オリンピックが行われる年に流行する(4年に1度流行する)傾向があるとして「オリンピック」とも呼ばれるが、近年はこの傾向が薄れつつある。

症状

dry coughと呼ばれる喀痰を伴わない咳をする事が多い。発熱は38.5を越えることもある。頭痛、咽頭痛、刺激性の咳(乾性の咳)倦怠感などのいわゆる感冒様症状を呈する。消化管へのウイルス感染によって嘔吐、下痢、腹痛などの症状を来たす事もある。最近では、大人が感染して重症化するケースが急増している。また、症状が呼吸器を中心としたものから消化器症状を併発、もしくは消化器症状を中心としたものへと移り変わってきている傾向がある。

診断

病原体の直接証明として分離培養、PCR蛍光抗体法がある。血清診断としてはペア血清による診断が確実である。迅速診断としてIgM測定が可能である。

治療

マクロライド系抗生物質テトラサイクリン系抗生物質がよく用いられる。ケトライド系、リンコマイシン系、ニューキノロン系薬剤も有効である。細胞壁を持たないため、ペニシリン系、セフェム系の薬剤は効果がない。

だが、現在ではマイコプラズマの全体の約15%耐性菌と言われており、上記の薬では効果がない可能性がある。

処方例:

1)ジスロマック®SR 2g x1 /1day

2)ミノマイシン®100mg 1T x2(bid) /5days

3)ジェニナック®200mg 2T x1 /5days

 

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎というのは、外来でしばしば見かける肺炎です。学校などで 集団発生することもあります。マイコプラズマ肺炎に代表される肺炎は '異型肺炎=普通とは違う肺炎'とも呼ばれます。その理由は、重症で入 院が必要となる他の細菌性肺炎の場合とは違って、レントゲン上の派手な肺炎の影の割には、全身状態 がそんなに悪くないことが多いからです。したがって、場合によっては外来通院で治療可能な場合もあ ります。

 

�マイコプラズマとは何ですか?

マイコプラズマは、ちょっと変わった病原体です。難しいことは抜きにして、ウイルスよ り大きく細菌より小さい病原体と覚えておけばよいでしょう。

 

�マイコプラズマ肺炎の特徴は?

しつこい咳発熱が特徴で、 聴診器で胸の音を聞いても悪い音がしないことが落とし穴になります。細 菌による肺炎は細気管支や肺胞という、吸った空気の通り道を中心に炎症が起っていますが、マイコプ ラズマによる肺炎は間質といって、細気管支や肺胞の外の部分に主として炎症が起っています。ですか ら、胸の音を聴診器で聞いても、肺炎特有のプツプツという泡がはじけるような音が聞こえにくいので す。しかし、時間が経ってくると、炎症が細気管支や肺胞の中に広がってきて、肺炎特有の音が聴診で 聞こえるようになってきます。細菌性肺炎は小さいこどもがかかるほど重症になりますが、マイコプラ ズマの場合、不思議なことに、乳幼児はかかっても肺炎にならずにカゼで終わることが多く、 年長児の方が肺炎になりやすいといわれています。これは言い換えると、 マイコプラズマに2回以上かかった時の方が、初めてかかるときよりも肺炎にになりやすいということ です。逆に、肺炎になってしまうと、乳幼児の方が重症になります。潜伏期は2〜3週間で飛沫感染し ます。

 

�どのように診断するのですか?

外来診療の実際をお話するとわかりやすいと思います。熱が出ていたり咳が激しい時は抗 生剤を出します。この抗生剤にはいろんなグループのものがありますが、効果と副作用のことを考え て、最初はセフェム系やペニシリン系といわれる抗生剤を処方することが一般的です。ふつうのカゼの 場合、長くても4日くらいすると、症状が治まってくるものですが、それを超えて熱やひどい咳が続く 場合は、ほかの病気であることがあり、少し警戒して抗生剤の種類を変えたりします。さらに続いて一 週間くらい経過しても症状がよくならない場合は、血液検査、尿検査、レントゲンなどの検査をしま す。マイコプラズマ肺炎の場合、この時、胸のレントゲンであっと驚くほどの白い影 があるのです。この肺炎では、よほど注意して聞かないと肺に雑音が聞こえないという落とし穴があります。そのため、積極的に肺炎を疑うのは難しいケースがあります。しかし、しつこい咳が続く時は、例え熱が無く て胸の音がきれいでも、レントゲンでこの白い影を発見することが案外多いものです。もう一つの落とし穴は、マイコプラズマには通常外来でよく出す、セフェム系やペニシリン系の抗 生剤が効かないということです。ですから、抗生剤を内服しているのになかなかよくならない カゼの場合には、積極的にマイコプラズマ感染を疑わねばなりません。さらに、血液検査でマイコプラズマの抗体の上昇が認められた場合、診断が確定します。この 抗体は2〜3週間して上昇してくるので、肺炎と診断された時の血液検査では、まだ上がっていない場 合もあります。マイコプラズマ肺炎に違いないと思っても、この血液検査でマ イコプラズマ抗体が上昇していない場合、クラミジア(細菌の一種で、しつこい咳を伴うカゼや気管支炎、肺炎のかなりの原因になっています。)などによる異型肺炎ということになりま す。

 

�マイコプラズマ感染では、他にどんな症状を起こしてきますか?

マイコプラズマは、ほかに上気道炎(ふつうのカゼ)、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、胸 膜炎などあらゆる気道の感染を引き起こします。気管支喘息の引き金になることもあります。いろんな形の発疹は比較的多い症状です。稀ですが、髄膜炎、脳炎、腎炎、溶血性貧血な どの重症となることもあります。

 

�どのような場合に、外来で治療可能ですか?

上に述べたように、マイコプラズマ肺炎は肺炎としては軽症であることが多いのです。特 に年長児の場合は、激しい咳はありますが、熱がないこともあり、ふつうに生活して、時には学校に行 っている場合もあります。ですから、食欲があり、薬がきっちりとのめる場合は、内服の抗生剤 (エリスロシンリカマイシンクラリスジスロマックな ど)だけで治ることがあります。少しひどい場合は、外来で点滴(ダラシンミノマイシンなど)をすることもあります。

 

�どのような場合に、入院になりますか?

全身状態が不良の場合です。すなわち、高熱で水分がとれず、脱水状態になっている時や、咳が激しくて睡眠や食事が著しく妨げられる場合です。この場合はマイコプラズマ以外の細菌にも二重に感染している可能性もあります。多くの場合、一週間前後の入院が必要です。